貸借の方法
農地の貸し方・借り方にはいろいろな方法がありますがもっとも一般的なのは賃借権を設定する方法で、昔から"農家が小作に出している"というのは、この賃貸借のことを意味している場合が多くなっています。
賃貸借は、貸主が借主に農地を耕作させ、その代わりに借主から小作料(地代)をもうらうことを内容とした契約で、期間に定めのある「定期賃貸借」と定めのない「不定期賃貸借」があります。
定期賃貸借の期間は最高50年ですが、特に期間内でも返還請求ができる旨の条項を定めていない限り、小作人の信義違反などで契約を解除できる場合しか返還請求はできません。
使用貸借は、貸主が借主に農地を無償で耕作させる契約です。返還請求などについて農地法で特に制限していないので、契約期間が終了したり、契約で定めた一定の使用収益の目的を達したときには終了します。また、期間に定めがない場合にはいつでも返還請求ができます。
相対以外で農地を貸す方法
農地の所有者が何らかの事情で農地の耕作をやめて貸し出す場合には、貸主と借主が相対で話し合って貸す・借りるのが通常ですが、次の方法もあります。
農地保有合理化事業
知事の承認を受けた農地保有合理化法人(県農業公社)が行うものとされており、農地保有合理化法人は、農地の貸し手から農地等を借り受けて農家に貸し付けて管理します。その賃借期間は、原則として10年以上の定期賃貸借とし、10年未満にすることが必要なときは農業経営基盤強化促進事業による利用権設定等促進事業を活用して賃貸借しておけば、期間が満了したときは確実に返してもらえます。また、農地保有合理化法人に貸し付けた小作地は、小作地の所有制限の適用を受けず、不在地主でも、在村地主で保有制限を超える面積でも、小作地を所有することができます。
農業経営基盤強化促進事業
農業経営基盤強化促進事業による利用権設定等促進事業は、農業経営基盤強化促進法に基づき市町村が行う農地等の貸し借りなどを促進する事業です。市町村が、農地等の貸し手の希望により適当な借り手を見つけ、貸借条件などを農地利用集積計画にまとめ、貸し手と借り手ならびに使用収益権を有する者の全員の同意と農業委員会の決定を得てその計画を公告すると貸し手と借り手の間で貸借関係が成立する仕組みです。これには、貸借についての農地法の許可は不要です。賃貸借でも期間が満了すれば、自動的に終了するようになっており、確実に返してもらえるし、離作料の心配もありません。期間満了後も引き続き貸したいときは、改めて農用地利用集積計画を作成することによって可能となっています。この事業によって貸した小作地は、小作地の所有制限の適用を受けません。また、この事業による貸借は、市町村という公的機関が中に入って行われるので、後々の契約の履行などについても安心できるといえるでしょう。
貸借にも許可が必要です
農地等の貸し借りには、農業委員会の許可が必要です。農地等の貸借契約をしたときは、貸主と借主の方はすみやかに許可を申請してください。
許可の基準
- 不耕作目的等の取得禁止
- 借主が常時従事しない場合の取得制限
- 小作地の転貸禁止
- 効率的利用をしない場合の借り受け制限