阿弥陀如来懸仏 1口(あみだにょらいかけぼとけ)
指定番号
工芸品第29号
指定年月日
昭和35年12月21日
所在地
個人所有
円形の杉板に銅板鍍金(どうばんときん)を施し、左右に釣金具をつけた懸仏である。本来、神社の御神体である鏡に仏の姿を表しており、本地垂迹(ほんちすいじゃく)の思想から発展したものと考えられる。
形状は内外の覆輪(ふくりん)の間に連珠(れんじゅ)2、3と交互に配し、その間に華文(かもん)を打付している。中央には定印(じょういん)をした阿弥陀如来が蓮台(れんだい)に座し、その上部に天蓋(てんがい)と、左右に水瓶(すいびょう)を貼り付けている。
この形は御正体として最も多い典型的なものであるが、全て完備のまま保存されているものは少ない。この点、この懸仏も天蓋の破損が著しく、水瓶に挿入する蓮も欠失しているが、各々その痕跡がはっきり解される。円形の形も完存され、当初の鍍金も所々に遺っている点も貴重といえよう。外側の肉太い覆輪が大きな連珠とよく調和のとれた美しさを醸し出し、これに大きな釣金具が咬みついたような力強さがあって懸仏としての重量感の満ちたものである。
製作年代は、中尊の頭部が大きく膝前を薄くし、いかにも素朴な小品の古式を思わすものであるが、肉髻(にっけい)が小さく、蓮弁(れんべん)の形、水瓶、覆輪の肉太い点から見ておそらく室町時代初期のころと思われる。径27センチメートル。