選挙運動と政治活動の違い
政治上の目的をもって行われる活動を政治活動といいます。広い意味では選挙運動も政治活動の一部です。しかし、この2つは行為として大変よく似ていますが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別しており、それらを定義付けすると次のようになります。
選挙運動
特定の選挙で、特定の候補者の当選をはかることを目的に投票行為を勧めることで、選挙運動期間中のみ認められています。
選挙運動期間
選挙運動期間とは、選挙期日の公示(告示)の日に立候補の届出をしてから投票日の前日までの間で、選挙運動はこの期間中に限って行うことができます。それ以外の期間、例えば立候補の届出の前にする選挙運動は「事前運動」として禁止されています。
政治活動
政治上の目的をもって行われる活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもので、原則として自由に行えますが、次のとおり規制が設けられています。
平常時の政治活動における文書図画の掲示に関する規制
選挙が行われていないときであっても、公職の候補者等(現職、候補者、立候補予定者)の氏名や後援団体の名称を書いた立札や看板、ポスター等が掲示されていると、それが政治活動なのか、あるいは選挙を目的とした選挙運動なのか判断しにくい状況が生じるため、公職の候補者等や後援団体の政治活動における文書図画の掲示に関して、公職選挙法上で制限がされています。
公職の候補者等の氏名又はその氏名が類推されるような事項を表示する文書図画や、後援団体の名称を表示する文書図画について、次のもの以外は掲示することができません。なお、記載内容は政治活動のために使用されるものであって、選挙運動にわたるものであってはなりません。
1 立札及び看板の類
公職の候補者等又は後援団体の政治活動用事務所ごとに、その場所において掲出される立札及び看板の類
(1)掲示場所
公職の候補者等又は後援団体の政治活動のために使用する事務所ごとに、掲示することができます。
※立札及び看板の類は、事務所ごとにその場所へ掲示されるものであり、事務所の実体のない場所に取り付けて掲示することはできません。
(2)大きさ
縦150センチメートル、横40センチメートル以内。(「足」の部分を含みます。)
※縦、横とは、単に2辺の長さを制限したものに過ぎないので、横にして使用することもできます。
(3)掲示枚数
1つの政治活動用事務所に、2枚以内で掲示することができます。
※公職の候補者等と後援団体の事務所が同じ場所でも、それぞれの事務所が政治活動のための各種事務を行っていれば、それぞれ2枚まで(総数4枚以内)その場所に立札及び看板の類を掲示することができます。
(4)証票の表示
市選挙管理委員会から交付を受けた「証票」を貼らなければ、掲示することはできません。なお、証票は3年毎に更新が必要になります。
※衆議院議員小選挙区選出議員、参議院茨城県選出議員、茨城県知事、茨城県議会議員選挙の場合は、茨城県選挙管理委員会が申請先となります。
(5)証票の交付枚数
選挙の種類 | 証票の交付枚数 | 証票の交付申請先 |
---|---|---|
市長選挙及び市議会議員選挙 | 候補者等用・・・6枚まで 後援団体用・・・6枚まで |
市選挙管理員会 |
※当該選挙期日の公示(告示)の日の前に掲示したものであれば、選挙期間中も掲示しておくことができますが、選挙期間中に新たに取り付けて掲示することや、移動することはできません。
(6)立札及び看板の類の異動や廃止
- 異動
立札及び看板の類を異動した場合は、市選挙管理委員会に届け出てください。 - 廃止
次の事項に該当する場合は、証票を返還するとともに市選挙管理委員会に届け出てください。
ア 立札及び看板の類の掲示をしなくなったとき。
イ 交付されている証票の選挙の種類を変更したとき(例:市議会議員選挙→市長選挙、市長選挙→市議会議員選挙)。
ウ 公職の候補者等でなくなったとき。
エ 公職の候補者等の後援団体でなくなったとき。
オ 後援団体を解散したとき(茨城県選挙管理委員会に政治団体解散届を提出し、受理された解散届の写しを添付)。
(7)罰則規定
証票の交付枚数や、立札及び看板の類の大きさ又は掲示場所等に公職選挙法違反があった場合は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処されることがあります。(公職選挙法第243条)
2 ポスター
ポスターは、次に掲げる項目を満たしているものについて、掲示することができます。
(1)ベニヤ板等で裏打ちされていないもの
公職の候補者等の個人の政治活動用ポスターは、ベニヤ板、プラスティック板、その他これらに類するものに裏打ちされた状態でないものに限り、掲示することができます。
ただし、ベニヤ板等で裏打ちされていないポスターであっても、「○○○後援会連絡所」や「○○○後援会会員証」のように、単に公職の候補者等又は後援団体の名称を表示したポスター(ステッカーなどを含みます。)で、その事務所や連絡所を表示し、又は後援団体の構成員であることを表示する目的によるものは、掲示することができません。
(2)表面に掲示責任者及び印刷者の氏名及び住所が記載されているもの
裏打ちをしていないポスターを掲示する場合には、必ずその表面に掲示責任者及び印刷者の氏名(法人にあっては名称)及び住所を記載しなければなりません。
※公職の候補者等及び後援団体が掲示する政治活動用とみなされるポスターは、選挙ごとに一定期間(任期満了による選挙にあっては、その任期満了の日の6ヶ月前の日から当該選挙期日までの間)、当該選挙区内に掲示することが禁止されます。
※政党その他の政治活動を行う団体(後援団体を含みます。)の政治活動用ポスターについては、選挙前の掲示制限は特にありませんが、政党その他の政治活動を行う団体の政治活動用ポスターであっても、特定の個人を目立たせる態様である場合等は、公職の候補者等の個人の政治活動用ポスターとしてみなされ、規制を受けることがあります。
また、政党その他の政治活動を行う団体の政治活動用ポスターであっても、公職の候補者等の氏名又はその氏名が類推されるような事項が記載されたポスターは、候補者となった日のうちに撤去しなければなりません。
3 演説会等の会場で使用する文書図画
政治活動のために行う演説会、講演会、研修会等で、開催中に掲示される立札、看板、ポスターの類は、選挙運動にわたらない限り、規格及び枚数に制限はありません。
よくある質問
【質問】
街頭演説等で公職の候補者等の氏名の記載された「のぼり」を立ててもいいの?
【答え】
公職の候補者等の政治活動の一環として、街頭や駅前等で行われる街頭演説や挨拶行為において、これらの公職の候補者等の氏名又は類推されるような事項が表示された「のぼり」、「旗」、「プラカード」、「たすき」、「腕章」を掲示(使用)することはできません。これに違反した場合には、罰則規定(公職選挙法第243条)もあります。
平常時の政治活動におけるその他の規制
1 年賀状等挨拶状の禁止
公職の候補者等が当該選挙区内にある者に対する年賀、暑中見舞等の挨拶状(電報その他これらに類するものを含むます。)を出すことは、平常時又は選挙時を問わず禁止されています。ただし、答礼のための自筆によるものについては禁止されません。
2 挨拶を目的とする有料広告の禁止
公職の候補者等及び後援団体は、当該選挙区内にある者に対して、主として挨拶(年賀、寒中見舞、暑中見舞及び慶弔、激励、感謝等の挨拶に限ります。)を目的とする有料広告を、新聞、ビラ、パンフレットに掲載したり、テレビやラジオを通じて放送することは平常時又は選挙時を問わず禁止されています。
選挙時(選挙運動期間中)における政治活動の規制
政党その他の政治活動を行う団体については、選挙期日の公示(告示)の日から投票日までの間(特定の選挙の選挙期間中)、当該選挙が行われる区域内での「特定の政治活動」が規制されます。
なお、規制の対象となるのは、政党その他の政治活動を行う団体の政治活動であって、個人の行う政治活動については前述した規制を受ける以外は、原則として選挙運動にわたらない限り自由であって何ら制限されません。
1 選挙運動期間中でも自由にできる政治活動
新聞(政党等の機関紙誌は除きます。)、雑誌、パンフレット等の広告又はテレビ、ラジオ等による政治活動等は、選挙運動期間や平常時を問わず自由に行うことができます。
2 選挙時に規制される政治活動
(1)衆議院議員、参議院議員、都道府県知事、都道府県議会議員、指定都市議会議員、市長選挙において規制される行為
- 政談演説会、街頭政談演説会の開催
- 政治活動用自動車(船舶)、拡声器の使用
- ポスター、立札、看板の掲示
- ビラの頒布
- 選挙に関する報道評論を掲載した機関紙誌の頒布又は掲示
- 連呼行為
- 公共建物における文書図画の頒布
- 掲示又は頒布をする文書図画への公職の候補者等の氏名又は氏名類推事項の記載
※ただし、参議院議員、都道府県議会及び指定都市議会の議員、都道府県知事、市長の選挙の場合、例外的に、1~7については一定の要件を備える団体(確認団体)に限り、選挙期日の公示(告示)の日から投票日の前日までの間、一定の範囲内で政治活動を行うことができます。なお、衆議院議員選挙には、確認団体制度がありません。
(2)市議会議員、町村長、町村議会議員選挙において規制される行為
- 連呼行為
- 公共建物における文書図画の頒布
- 掲示又は頒布をする文書図画への公職の候補者等の氏名又は氏名類推事項の記載
※確認団体制度はありません。また、(1)の選挙と同時に行われる場合は、(1)の行為についても禁止されます。